革製品は、その耐久性や風合いから多くの人に愛されています。手作りの革製品は特に、オリジナリティや手間がかかっていることから、価値が高まります。そこで、今回はレザークラフト入門・革製品制作入門として、基本の道具や技法を紹介します。これからレザークラフト・革製品制作を始めたい方や、基本を再確認したい方の参考になれば幸いです。
もくじ
革製品制作に必要な基本道具一覧
まずは、レザークラフト・革製品制作に必要な基本道具を紹介します。
これさえ買えば達人クラスになっても間違いなく使えるというものを紹介します。
革包丁・カッティングマット
革をカットする際には、革専用の包丁とカッティングマットが必要です。革包丁には直刃・斜刃・丸刃など、用途に応じた種類があります。カッティングマットは、刃を痛めずに革をカットできる素材でできています。
目打ち・モール
革製品を縫う前に、縫い目を開けるための道具が必要です。目打ちで革に穴を開け、モールでその穴を整えます。

ちなみにアパートやマンションではモールを使っての作業は騒音と振動が大きくて苦情が来ます。やり始めると静音性を求められると思います。静音を求める記事は他で書きたいと思います。とりあえずは吸音マットと硬質ゴム板で様子を見ましょう。目打ちに関してはヨーロッパ目打ちや菱目打ちなどがありますが、使いやすい方を選びましょう!私は菱目打ちから入りました。
へり落とし・フレンチエッジャー
へり落としは、革の端を整えるための道具で、綺麗な仕上がりに役立ちます。フレンチエッジャーは、革の厚みを薄くするための道具です。

フレンチエッジャーは最初はなくても製品を作れますが、コバを整える際に使うので、こだわり始めたら絶対に使うことになるので1本は購入しときましょう。ヘリ落としは最初はエルのマスターヘリ落としで間違いないのですが、こだわり始めると0番と4番が欲しくなるので、他のものに行き着くことになると思いますが、マスターヘリ落としを1〜3番揃えておけばとりあえず最終地点までOKです。これ以上ないぐらいスパッと落とせる良質なツールです。
ステッチマーカー・ステッチグルーバー
ステッチマーカーやステッチグルーバーは、革にステッチ(糸目)のガイドラインを引くための道具です。ステッチマーカーは、革に均一な間隔で穴を開けることができます。ステッチグルーバーは、革の表面に溝を作り、ステッチが埋まるように仕上げることができます。これにより、ステッチが革の表面から浮かず、綺麗な仕上がりになります。

ステッチンググルーバーで溝を掘って糸を縫うというのは、レザークラフターの間では実はあまり行われていません。なぜなら、革の表面(ギン面)を削り取ると、強度が著しく落ちるからです。なので、その代わりにディバイダーを使って銀面を潰してステッチ用のガイドラインにします。そこで便利なのがSEIWAから出ているマルチステッチンググルーバーです。先端を交換してディバイダーやモデラーを取り付けることができる様になってます。線引きに関してはディバイダーよりもモデラーを使った方が圧倒的に使いやすいです。菱目打ちなら沈み込みも作れます。これで決まりです。
捻(ネン)・アルコールランプ
捻(ネン)は、革のエッジを整え、丸みを帯びた綺麗な仕上がりを作るための道具です。ネンを使うことで、革製品が高級感のある仕上がりになります。アルコールランプはネンを温める道具なのでどれでも大丈夫です。

コバの外から内側に何ミリの場所にネンを引くか?という個人の裁量で美しいと思ったところに引くものなので、とりあえず安く手に入るネンを全種類試してみて、より良いものを見つければと思います。
ボーンフォルダー
ボーンフォルダーは、革の折り目を整えたり、革の表面を滑らかにするための道具です。ボーンフォルダーを使って、革製品の仕上げをより美しく、プロフェッショナルな見た目に仕上げることができます。

これについては使えれば何でも大丈夫です。上級者になっても使いますが、もしかしたらステンレス製にするかも。
磨き・サンドペーパー
レザークラフトのへりの仕上げには、磨き作業(コバ磨き)が欠かせません。サンドペーパーを使って、革の表面を滑らかにすることで、仕上がりがより美しくなります。サンドペーパーの粗さは、目的に応じて選ぶことが重要です。

サンドペーパーは耐水ペーパーでも良いですが、たまに青い汚れが付着するので、基本はサンドペーパー800番でささっと磨くと良いです。磨きについては頒布の方が効率よく磨けます。届かないところもあるのでコーンスリッカーと呼ばれる磨き道具もあれば良いです。
デスクライト
レザークラフトでは、細かい作業が多いため、デスクライトを用意して十分な光を確保しましょう。作業効率が上がり、ミスも減るでしょう。

オーム電気のルーペ付きライトは若干デザインがださめですが、光量も使いやすさもバッチリです。
クランプ
レザークラフトでは、接着した革同士を圧着する必要があります。

人の手ではやれないので、道具を使いましょう。ちなみに後述しますが、ゴムのり・白ボンドの両方で使いますのでぜひ揃えてください。ちなみに結構人気商品なので、1万円を超えてくるともっと使いやすい物が買えます。
定規
革をカットする際や、デザインを描く際には、定規が必要です。定規を使って正確な寸法を測り、綺麗な仕上がりを目指しましょう。

とりあえず、JIS1級って書いてあるものを選びましょう。レザークラフトの場合は1mmを詰めるか詰めないかで、作った品物にカードが入らなかったり、お札が入らなかったりする世界です。なので必ず精度の良いステンレスのものを買いましょう。
接着剤・糸・染料
レザークラフトには、接着剤や糸、染料も必要です。接着剤は、部品を仮止めする際に使用し、糸は縫い合わせる際に必要です。染料は、革に色を付ける際に使用します。

接着剤は匂いや環境を考えると有機溶剤の入っているものよりも水性の扱いやすいものを購入して慣れていった方が絶対に良いです。特にサイビノールはコスパも接着力も最高です。600番を購入して水で薄めて使うのがおすすめです。糸についてはビニモMBT5番が一般的でおすすめです。染料はとりあえず黒と茶色があれば万事OKです。
革の種類と選び方:素材による特徴と用途
レザークラフトにおいて、適切な革を選ぶことが重要です。ここでは、革の種類とその特徴、用途について解説します。
牛革の特徴と用途
牛革は、厚みがあり丈夫で耐久性に優れています。そのため、バッグや財布など、頻繁に使うアイテムに適しています。また、使い込むほどに味が出るという特徴があり、長く愛用できる魅力があります。

基本的に味が出てくるのはタンニン鞣しの革です。クロム鞣しとタンニン鞣しの革があって、タンニン鞣しはオーガニックな技法で鞣された革になります。クロム鞣しは化学薬品で鞣された革になります。どちらもメリット・デメリットがありますが、せっかくレザークラフトをやっているならタンニン鞣しの革で制作すると良いです。匂いもいいですしね。
あと、基本的にレザークラフトで財布や小物を作るならタンニン鞣しのイタリア産の牛革を選ぶと良いです。
羊革の特徴と用途
羊革は、柔らかく軽量で、手触りが良いのが特徴です。傷がつきやすいため、取り扱いに注意が必要ですが、衣類など、軽やかさが求められるアイテムに適しています。

これに関してはレザークラフトを始めてすぐにシープスキンは最初に買わないでいいです。まずは牛革で色々経験積んでからです。
豚革の特徴と用途
豚革は、繊維が緻密で通気性が良く、耐久性にも優れています。また、価格が手頃であることから、財布やバッグなどの日常使いのアイテムに適しています。

表に牛革で裏側に豚革を使うこともあります。ただし、レザークラフトをせっかくやっているのであれば、あまり製品で使っているのは見ないし牛革一択でいいと思います。
馬革の特徴と用途
馬革は、耐久性が高く、摩耗に強いことが特徴です。また、光沢があり、使い込むほどに艶が増すため、高級感が求められるアイテムに適しています。

ホースバットやコードバンは鞄や靴や財布でよく使われており茶芯が映えるので良いですが、最初に一枚買うならやっぱり牛革で決まりです。
カッティング技法:革を正確に切る方法とポイント
レザークラフト・革製品制作で重要な工程のひとつが、革をカットすることです。正確なカットができると、仕上がりが美しくなります。
直線カットのコツ
直線カットを行う際は、定規を使って正確な寸法を測りましょう。革包丁を定規に沿って滑らかに動かすことで、綺麗な直線カットができます。

革包丁はある程度幅があるので定規がなくても比較的簡単に直線を切れるので実は定規を当てる必要はありません。定規を使って気持ちよく切れるのはカッターを使う時だけです。革包丁に定規は不要です。
曲線カットのコツ
曲線カットを行う際は、革の伸縮性を考慮してカットしましょう。小刻みに切ることで、滑らかな曲線が得られます。また、適切な刃の角度を保ちながらカットすることも重要です。

革包丁で小刻みに切るか、ステンレスR定規という道具を使って当てて切るのがベストです。
細かいデザインのカット方法
細かいデザインをカットする際は、細い刃の革包丁を使用しましょう。また、デスクライトで十分な光を確保し、慎重にカットすることがポイントです。

細かいデザインは私は革包丁では切りません。アートナイフやメスで切るのがベストです。しかしながら、切りづらいデザインは基本作らないのがベストです。あとは金型を使うか。やっぱり簡単で綺麗なのが良いです。
カッティング時の安全対策
カッティング時には、安全対策が重要です。まず、カッティングマットを使用して、テーブルや床を保護しましょう。また、革包丁の刃を常に研いで鋭利に保ち、スムーズなカットを心掛けてください。カット中は手元に注意し、自分の手を切らないように気をつけましょう。

革包丁は常に鋭くしておかないと全然切れなくなるので、常に手元に革砥を用意しておくのがベストです。あと作業にはニトリル手袋があるといいです。サイズは小さめで購入するのがおすすめ。
縫い方の基本:手縫いとミシンを使った縫製テクニック
革製品を縫い合わせる方法には、手縫いとミシン縫いがあります。どちらを選択するかは、製作するアイテムや個人の好みによります。
手縫いの基本ステッチ:サドルステッチ
手縫いでよく用いられるステッチが、サドルステッチです。丈夫で美しい縫い目が得られるため、革製品に適しています。目打ちで穴をあけ、2本の針を使って縫い進めていきます。

お金を稼げていないうちは基本的には手縫いで良いと思います。お金を稼げる様になってきてからミシンを導入すればスムーズです。なので、基本サドルステッチで良いです。
ミシンを使った縫製方法
ミシンを使う場合は、革専用のミシンや針、糸を用意しましょう。ミシン縫いは手縫いに比べて効率が良く、大量生産に向いていますが、縫い目が手縫いほど丈夫ではありません。
綺麗な縫い目を作るコツ
綺麗な縫い目を作るためには、均一な間隔で穴をあけ、糸の張り具合を調整することが重要です。また、縫い始めと終わりはしっかりと止めることで、ほつれを防ぎます。
縫い目を強化する方法
縫い目を強化する方法として、接着剤を使用して裏側から補強することがあります。また、糸の太さや種類を選ぶことで、縫い目の強度を向上させることができます。
仕上げのコツ:エッジ処理とコバ磨きで美しい仕上がりを実現
レザークラフト・革製品の仕上げには、エッジ処理と磨きが欠かせません。きれいな仕上がりを目指しましょう。
エッジの整え方とヘリ落とし
エッジ処理は、革製品の縁を整え、美しい仕上がりにするための工程です。へり落としやフレンチエッジャーを使って、革の縁を整えます。ヘリ落としは、エッジを斜めに削って滑らかにすることで、よりプロフェッショナルな仕上がりを実現します。
コバ磨きの方法
コバ磨きは、整えたエッジをさらに滑らかにし、光沢を出すための工程です。サンドペーパーでエッジを磨いた後、エッジコートやワックスを塗布し、布や専用の道具で磨きます。
仕上げに使うワックスやクリーム
レザークラフト・革製品の仕上げには、ワックスやクリームを使って保護・磨きを行います。これにより、革の表面が滑らかになり、光沢や色合いが美しくなります。また、ワックスやクリームは、革製品を保護し、水濡れや汚れから守る効果があります。
ポリッシングで光沢感を出す方法
ポリッシングは、革製品の表面にさらなる光沢感を与える仕上げ方法です。布や専用のポリッシングツールで、ワックスやクリームを革になじませ、磨き上げることで、美しい光沢感が得られます。
さいごに
これらの基本的な道具と技法を学んだ後、さらに独自の工夫やアイデアを加えて、自分だけのオリジナル革製品を作成してみてください。手作りの革製品は、使い込むほどに味が出るので、長く愛用できることでしょう。
また、革製品制作には様々な革の種類がありますので、それぞれの特徴を理解し、適切な革を選ぶことも重要です。革の厚さや柔軟性、風合いなどが製品の見た目や使い心地に大きく影響します。初心者向けには、扱いやすく比較的安価な牛革や羊革がおすすめです。慣れてきたら、より高級な素材や独特の風合いを持つ革にも挑戦してみてください。
最後に、革製品制作は練習と経験が重要です。最初から完璧を求めず、失敗を恐れずに挑戦しましょう。何度も練習を重ねることで、技術が向上し、自分だけの素敵な革製品が作れるようになります。
エルから出ている革包丁「創竜」は高いだけあって切れ味も抜群です。これ以上はないので、これさえ手に入れれば達人クラスになっても他の包丁は不要です。カッティングマットについては、私の場合は無印良品の折りたためるカッティングマットを使っています。